作家・吉村喜彦のホームページ

いま、ぼくらに一番必要なものは、
自然に根ざした海人の深い知恵ではないか。

循環する生命の繋がりの中で、ぼくたちヒトも生きている。
自然から切り離された暮らしをしていると、どうしてもそれを忘れてしまう。
目には見えないけれど、たしかに在るもの。
海人(うみんちゅ)それをリアルに感じている。

(「あとがき」より)

オキナワ海人日和 吉村喜彦

『オキナワ海人日和』 吉村喜彦(文&写真)

ホンモノの“沖縄暮らし・海暮らし”がここにある。

忘れもしない。1993 年の 7 月。
八重山(やえやま)の海で初めてシュノーケリングをした。
竹富島(たけとみじま)の海人(うみんちゅ)と一緒だった。
海人はあっという間に水深 10 メートル以上潜り、
海中でもまるで息をしているようにゆっくりとシャコ貝やトコブシを捕った。
ゴシキエビやアオブダイを素早く突いた。
その姿はまさに 海の狩人だった。

竹富島(たけとみじま)の海人(うみんちゅ)と一緒だった。

なんてカッコいいんだろう。
と同時に、沖縄の海にはなんとたくさんの青色があるんだろう と思った。

それ以来、漁師に、そして沖縄にはまっていった。

沖縄に通えば通うほど、「楽園」と呼ばれることに反発を覚えた。
そこには人の暮らしがあるし、爽やかな風の吹く明るい海がいつも広がっているわけではない。

沖縄の魚はどういう人がどうやって獲るのだろう?
どんなふうに海藻を育てているのだろう?
海人は、そしてウチナーンチュは、どんな思いで海と関わっているのだろう?

暮らしを見たい。思いを聞いてみたい――。

都道府県の中で四方が海に囲まれているのは沖縄と北海道だけ。
しかも沖縄はちょっと高い所に行けば、どこからでも海が見える。
幸も不幸もすべて海からやってきて、海へと還(かえ)っていく。

海人の船に乗り、浜を歩き、話を聞く。
そこから何が見えてくるだろう。
どんな青の色が見えてくるだろう。

(「はじめに」より)

「新しい沖縄本」がここにある。――――――――――

漁船に乗りこみ、荒波をかぶり、船酔いに苦しみつつ、 漁師の人生に泣き笑い──
海人 11 名の暮らしと生き方が胸に迫ります。
彼らの人生には沖縄の歴史と文化が映しだされています。
沖縄人(ウチナーンチュ)の、そして海人の哲学がポップに明るく語られています。

登場する海人(うみんちゅ)は、こんな男たちです。
●日本最大の甲イカを突く男 ――石垣島・兼次信男(かねしのぶお)
●巨大ビニールハウスで海ぶどうを育てる男 ――久高島・西銘正順(にしめまさより)
●姿は白人、中身は沖縄人。ザ・チャンプルー男――沖縄本島・儀間政夫(ぎままさお)
●真夏の大潮の日だけ島に押し寄せる魚を待つ男―久高島・内間待仁(うちままつじん)
●荒海でカジキと闘う男 ――与那国島・川田智志(かわださとし)
●ウニを絶滅から守る男 ――古宇利島・照屋弘則(てるやひろのり)
●モズク養殖を成功させた男 ――久米島・渡名喜盛二(となきせいじ)
●タコの家を知りつくす男 ――伊平屋島・西銘一雄(にしめかずお)
●神さまの贈り物をいただく男 ――久高島・西銘泰男(にしめやすお)
●島一番の賢者と尊敬される男 ――池間島・伊良波進(いらはすすむ)
●海が大嫌いだった男 ――石垣島・池田元(いけだはじめ)

 
 
 

プロデュース:吉村有美子