作家・吉村喜彦のホームページ

それって、偽装ですよね。

ライバル商品の台頭。
口先だけの上司。 
社内政治に長(た)けた同僚・・・。
え~い。みんな、まとめて、かかってこい!

ウイスキー・ボーイ

『ウイスキー・ボーイ』 吉村喜彦

(あらすじ)

大手の酒造会社スターライトの広島支店で、
ビール営業でトップに立った主人公・上杉朗(うえすぎ・あきら)。
上杉は、念願かなって、東京本社の宣伝部に復帰した。
 
しかし、待っていたのは──
ウイスキーの売上げは低迷し、会社の打ち出す販売戦略も迷走つづき。

そんなとき、上杉のまえにあらわれたのは、伝説のブレンダーだった。
上杉は、かれとの出会いで、会社の嘘を知り、
「そんなことが、まかりとおっていいのか」
と巨像相手の大勝負に出る!
   
広島時代の盟友・木下鉄男も、再び登場して、上杉を助け、
なにより、この作品で、上杉は結婚し、サッサというパートナーを得る。
ところが、サッサは幼い頃から、重症のアトピーで悩んでいた。
     
会社は欺瞞だらけの、ひどい状態だし、
結婚生活には、重い病の影……。
   
どうする、上杉?
     
ひとりの青年が、ほんとうの社会人として、おとなになっていく姿を
感動的に描く、永遠のラブ・ストーリー。

ウイスキー・ボーイ

(PHP研究所・担当編集者・兼田将成さんから、ひとこと)

相次ぐ「食材・食品偽装」「○○○細胞の存在の有無」「作曲偽装」などのニュースに接するたび、
「それって、おかしくないですか?」という疑問を、組織で持てなかったのか、持つ人はいなかったのか、と首をかしげます。

もしかしたら「会社の常識=社会の常識」という勘違いに毒されていたのかもしれません。
そして会見などを見ておりますと、露見した事実に、「えっ、これってダメなの ?」
と驚いているかのような印象すら持ちます。

本人が意図していようといまいと、社会人になって10年も経つと、知らずしらずのうちに、
「会社の常識=社会の常識」「業界 の常識=世間の常識」のようになってしまいます。
もちろん、大きな勘違いなのですが、私自身も、勘違いして仕事でヒヤリとした経験があります。

本書では、大手酒造会社に勤める中堅社員が、ウイスキーの宣伝部で奮闘する姿を通して

「広告や商品は、誰のためにあるのか? 」

「働くことの意味とは? 」

を読者に問いかけていきます。

私自身、もっとはやく、この作品に出合っていれば、先のような「勘違い」 を防ぐことができたと思います。
長年サントリーに勤められた著者だからこそ描ける興味深い話題も満載の小説です。

私は、ビールなどの発泡系のお酒がパッと外に開いていく印象があるのに対し、
ウイスキーは内側に、自身の内面と向き合うように、 はたらきかけるお酒のように思います。

ウイスキー同様、読者が自分の内面や、自分の仕事に向き合うきっかけとなりましたら幸 いです。

 

プロデュース:吉村有美子