作家・吉村喜彦のホームページ

村は埃だらけの道に沿って細長く延び、その道に並行して天井川のように鉄道線路が走っている。そして、集落を左右から挟むようにして標高100メートル足らずの芝に覆われた小高い丘がゆるやかに広がる。

ゼチェ・ブラジニ村 芝に覆われた小高い丘

ゼチェ・ブラジニ村 芝に覆われた小高い丘

ゼチェ・ブラジニ村 馬車が行き交う

ゼチェ・ブラジニ村 馬車が行き交う

日曜の朝は6時から村の外れに市が立つ。

釘などの金物類、革靴、ジョギングシューズ、瓶詰めの食品、ジュース、野菜、フルーツ、パン、Tシャツなどの衣類、帽子、ポリバケツ、ペイント、刷毛、ソケットや電球などの電気器具、タイヤなどなど。日常雑貨が馬車に積まれて持ち込まれ、売り買いされる。

ゼチェ・ブラジニ村 の朝市

ゼチェ・ブラジニ村 の朝市

日曜の朝は6時から市が立つ

日曜の朝は6時から市が立つ

様々な商品が市には並ぶ

様々な商品が市には並ぶ

集まった村の人たちはみんな大らかで、レンズを向けても全く嫌な顔をしない。むしろ、「おれ、撮ってくれよ」と、仕事をしている最中なのに、仕事なんかほったらかしで言い寄ってきたりする。それは男も女も子どもたちも、みんな同じだ。

ゼチェ・ブラジニ村の子供達1

ゼチェ・ブラジニ村の子供達1

ゼチェ・ブラジニ村の子供達2

ゼチェ・ブラジニ村の子供達2

ゼチェ・ブラジニ村の子供達3

ゼチェ・ブラジニ村の子供達3

いろんな土地に旅をしてきたが、こんなに写真を撮られることに大らかな所は今までになかった。しかも、写真を撮ったからといって、お金を要求されることは一度もない。ほんとうにうれしそうに、レンズの中に収まるのだ。

そして、この人出を狙って、生ビール・バーも早朝からオープン。

500ミリリットルの中ジョッキ1杯1万レイ(39円!)。これがまた軽くて爽快で美味しい。かわいた空気にぴったりで、いくら飲んでも飲みあきないのだ。

村のおっさんたち

村のおっさんたち

バーに入って生ビールを注文し、ジョッキを持って飲みながらウロウロしていると、村のおっさんたちも「おお、こいつは酒飲みだ」とばかり、ニコニコしながら寄ってきては、乾杯していく。

1日に2本走る鉄道

1日に2本走る鉄道

小学校は午前と午後の1日2部制で生徒数は30。

ルーマニア語で授業をするので、入学前にジプシー語しかしゃべれなかった村の子どもたちにとって、ルーマニア語習得がまずは一番の問題だ。

先生(ジプシーではない)は近くの街からやってきて、月曜から金曜まで村に滞在し、1年生から4年生までを同じクラスで教える。

印象的なのは、子どもたちの瞳がきらきら輝いていること。

印象的なのは、子どもたちの瞳がきらきら輝いていること。

先生は、「ここは特別な音楽村。親たちの血を継いで、この村の子どもたちの音楽的感性はとびぬけて高いです。国内で、もっとファンファーレ・チォカリーアへの関心が高まると、学校に楽器もたくさん買ってもらえるようになるんですが。ジプシー村だからといって、他の村よりも教育水準が低いなんてことは一切ありませんよ」と話す。

チォカリーアに影響を受け、村には少年だけのファンファーレ・ジュニア(平均年齢15歳)というブラスバンドがつくられた。

少年たちのバンド、ファンファーレ・ジュニア

少年たちのバンド、ファンファーレ・ジュニア

埃舞う村の大通りで、その少年たちに演奏してもらったが、みんな、おとな気取りで、カッコつけてプレイするのが可愛い。しかも、チォカリーアを彷彿とさせる強烈な音を出した。

居間でブラスを練習する3歳8ヶ月のフェルナンドもそうだったが、ゼチェ・ブラジニ村では、音楽が暮らしに溶け込んで渾然一体となっている。

世界に比類のないジプシーブラスを生み出した理由が、身体ごと理解できた。

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