雲ひとつない、快晴の東京。
暑い。とにかく、暑い。
ちょっと歩くだけで、とても疲れます。
朝おきると、だるい。めっちゃ、だるい。
そんなある日、
「疲れたときには、うなぎだよ」
と江戸っ子のイトコ、スーちゃん
が教えてくれました。
そうか。
やっぱり江戸っ子は、うなぎ、か。
というわけで、食べに行きました。
神谷町の「五代目野田岩・麻布飯倉本店」。
![(東京タワーのすぐ近くにお店はあります)](http://www.monkeyhouse.co.jp/wp-content/uploads/2017/07/2017071800-yoshimura_mat.jpg)
(東京タワーのすぐ近くにお店はあります)
店に入ると、美味しそうな「うなぎのたれ」の香りに
包まれます。
もう、それだけでお腹がなりそう。
![(まずはお吸い物)](http://www.monkeyhouse.co.jp/wp-content/uploads/2017/07/2017071801-yoshimura_mat.jpg)
(まずはお吸い物)
ご飯の上に隙間なく載ったうなぎ。
箸を入れると、すっと、うなぎの身が切れます。
下にあるご飯と一緒に口に含むと、
ふっくらとして、まるでスフレみたい。
舌の上で、柔らかく溶けていく感じ。
![(うな重。「桂」5400円)](http://www.monkeyhouse.co.jp/wp-content/uploads/2017/07/2017071802-yoshimura_mat.jpg)
(うな重。「桂」5400円)
ご飯も一粒一粒が、しっかりと自分というものを持っています。
ご飯同士が、互いにべとついた関係ではありません。
たれのかかったご飯が、ほんとうに美味しいです。
食べすすむうちに、身体が芯からほっこりしてきます。
血がめぐってきたんでしょうね。
炎暑と冷房のなか、右往左往する自律神経は、失調しがち。
そんなときに、うなぎは、自律神経も整えてくれるようです。
![(箸置きも、うなぎ)](http://www.monkeyhouse.co.jp/wp-content/uploads/2017/07/2017071803-yoshimura_mat.jpg)
(箸置きも、うなぎ)
家に帰ってきて、風呂に入りながら、
内田百閒(うちだ・ひゃっけん)の古い文庫本を読みかえしていると、
「東京日記」の中に、たまたま「うなぎ」が出てきて、びっくり。
巨大うなぎが皇居のお濠(ほり)から這いあがって、
日比谷交差点から数寄屋橋方向に動いていく、という話があって、
不思議な恐怖感のある、奇妙な味わいの小説でした。
そういえば、百閒の「サラサーテの盤」(鈴木清順監督の映画「チゴイネルワイゼン」の原作)
には、親友と川べり(リバーサイドですね)の料亭で、
大きなうなぎの蒲焼きを食べる情景がありました。
映画では、原田芳雄が蒲焼きを指でつまんで持ちあげ、
下からかぶりつくというシーンになっていました。
百閒は、うなぎが好きだったそうです。
晩年に27日間、うなぎの蒲焼きを食べ続けたという話もあります。
(内田百閒の肉声です)
うな重を他所(よそ)からもらうと、
まず上に載った蒲焼の部分は捨てさり、
たれの染みたご飯だけを美味しくいただく、
ということもしたそうです。
頑固一徹、反骨で、自分の主義を貫きとおしながらも、
お茶目な姿勢が、素晴らしい。
百閒の有名なことばに、
「嫌なものは嫌だ」
というのがあります。
まさに、その通り。
「嫌なものは嫌だ」と
食べものにも、ひとにも、
はっきり言うことはたいせつですね。
「AにはAの良いところがあり、BにはBの良いところもあるんですから、
そこんところ、まあまあ」
なんて言っているのが、「おとな」と思っているのは大間違い。
夏は暑い。
うなぎは美味い。
炭酸はのどに心地いい。
裏表のあるやつは、嫌い。
これで、決まり。