作家・吉村喜彦のホームページ

11月1日の東京新聞・夕刊の文化面に、
ぼくのエッセイ「ふんわり二子玉川」が掲載されました。

「二子玉川の四季を」というオーダーにもとずいて、
書かせてもらいました。
ふんわり二子玉川

エッセイの内容はこんな感じです。
二子玉川の夏

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 結婚して二子玉川に住んで、28年。
部屋探しのときに、野川の岸辺にコウモリがたくさん飛んでいるのを見て、
この土地で暮らそうと決めた。

 戦前、祖父や母が二子玉川に住んでいたので馴染みはあった。
が、なによりコウモリがまだ東京にいるということに感動した。

バカルディというラム酒のシンボルがコウモリで、
「ラッキー・バット」と呼ばれていることも大きかった。
幸福のコウモリが二子玉川に導いてくれたのだと思った。

 いまは多摩川沿いに住んでいるが、
 拙著『バー・リバーサイド』シリーズは、
 自宅から見える四季折々の川景色、風や光を書きたくてはじめたものだ。

 今年の冬はよく雪が積もった。
 河川敷は一面の銀世界になり、川堤では子どもたちが橇遊びをしていた。
 女房はベランダに身の丈1メートルの雪だるまを作った。

 岸辺が日一日と緑に染まり、やがて春。 
 川の両岸には菜の花が黄色い帯を流す。
 河川敷には、ぼくと女房が桜三兄弟と呼ぶ桜の樹があって、
 毎年ひっそりとした夕方や霧のような雨の午後、花見にいく。
 やがてツバメが空を滑りはじめる。
 去年やってきたツバメの子どもたちかもしれないね、
 と女房とふたり、チチチとツバメの鳴きマネをすると、
 ツバメはすぐ近くまでふわりとやって来る。それがうれしい。

 河原の葦が、南の風に葉むらをざわつかせるようになれば、夏。
 濃いみどりの陰で涼をとると、アイスクリンの自転車がゆっくり行き過ぎる。
 まるで少年時代の夏休みのようだ。

 そして、いまは秋。夕陽に染まるススキの穂は、
 河原を散歩するゴールデンレトリーバーの尻尾のようにやさしい。
 毎晩、女房とぼくは、寝る前に川の神さまに一日の感謝を述べる。
 何かとストレスの多い東京だけど、多摩川にはきっと神さまがいると信じている。
 そのやさしい神さまが、ぼくの新刊『酒の神さま』(ハルキ文庫)の形をとってくださっていると思うのだ。
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冬の桜三兄弟
春の桜三兄弟
菜の花の岸辺
 
 
 
 

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