作家・吉村喜彦のホームページ

今週は、「食と音楽で巡る地球の旅」。いよいよ最後の週です。
 みなさんの「好きな食べもの」をテーマに
、たくさんいただいたリクエストとメッセージで、
イメージの旅をいたしましょう。

さて、最初は、神奈川県にお住まいの「眠れるトド」さんからのメールをご紹介します。
 わたしの好きな食べもの、それは「アユの味噌汁」です。
 子どもの頃、多摩川のほとりに住んでいて、父はアユ釣りが大好きでした。
父が釣りから帰ると、アルマイトのお弁当箱の中に味噌に埋まったアユが数匹。
それらが、晩ごはんの時にお味噌汁になるのです。
アユの「おだし」の出たお味噌汁をすすり、ぶつ切りになったアユを食べ、
「こんなにおいしいものはない。」と思ったのを覚えています。
 でも、ほどなく多摩川は自然を失い、アユも釣れなくなり、
 この味噌汁も記憶の世界のものになってしまいました。
吉村さんの小説「バーリバーサイド」を読んだら、
多摩川の豊かな自然がたっぷりと描かれていて、「あの懐かしい川は再生したんだなあ」と感じ、
うれしくなりました。

 「眠れるトド」さん。メール、どうもありがとうございました。
去年、多摩川には鮎が約450万尾以上、遡上したそうです。すごいですね。
 東京都の「二子玉川の女王」さんからは、こんなメールをいただきました。

番組の始まった5年前から車で配達の仕事をしながら、
楽しく、興味深く聞かせて頂いてます。
時々出てくるダジャレで車の中で一人笑いしてました。
生活の一部になっていた番組がなくなってしまうのはかなりショックです。

 二子玉川の女王さん。うれしいメール、ほんとにありがとうございます。
二子玉川はまさに多摩川の街。多摩川沿いの道を走りながら、聴いてくださっていたんですね。
 では、「眠れるトド」さんからのリクエスト、「まぶしい草野球」。お聴きください。
 多摩川の河川敷には、たくさんの野球グランウンドが、ありますよね?

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M1.松任谷由実「まぶしい草野球」               3:43

 

 
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  東京都の「ちびえ」さんからは、こんなメールいただきました。

 吉村さんの番組がおしまいとのこと。びっくりして残念で、さみしいです。
テーマ曲の「いなえ。いなえー」が聴けなくなるのも残念。
「いなえー」といえば「稲」。あ、関係ないですか。
ま、大目に見ていただくとして、
ワタシが忘れられないのは山小屋のごはん(白飯:しろめし)です。
若い頃、標高2,500mほどにある山小屋で小屋番をしておりました。
小屋の裏には山から滲み出した水を集めた「水場」があり、
その水で炊いたごはんのおいしいことといったら!
お客さまに出すごはんが炊きあがり、圧力鍋のフタを開けた時の湯気と香り。
口に入れ、ハグッと噛んだ時の甘味・・・
あとにもさきにも、あんなに白いごはんを食べまくったことはなかったです。
半年のシーズンを終えて小屋じまいをして下山したときは、
入山前より4kg増えておりましたっけ(笑)
こんな思い出話を吉村さんに聞いていただくのも、もう最後なのですね。
さみしいなあ・・・。
特別番組などで、またラジオでお会いできる日を夢見つつ、
ありがとうございました。ごちそうさまでした。
ウマかった、ウシまけた・・・

「ちびえ」さん。メール、ありがとうございます。ウマかった、ウシまけた。いいですねえ。

 さて、埼玉県の「磯村けいぞう」さんからは、

 朝の光とコーヒーの似合う、すてきな番組だったなあと、いま、しみじみ思います。
リクエスト曲は、ブラジルの歌手カエターノ・ヴェローゾの「ククルクク・パロマ」です。
 パロマは鳩。病気で亡くなった女性を想い、死んで鳩になった男の歌だとか。
ククルクク〜という鳴き声が切ないです。
鳩は平和の象徴でもあります。
平和が危うくなっているように感じられる今、
鳩の歌に耳を澄ませるのもいいかもしれません。
よろしくお願いします。

 磯村さん。メール、ありがとうございました。おっしゃる通りの世の中ですね。
平和がないと、美味しいものが食べられません。お酒も飲めませんよね。
 では、カエターノ・ヴェローゾの「ククルクク・パロマ」。聴きましょう。
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M2.カエターノ・ヴェローゾ「ククルクク・パロマ」      3:46

 

 
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 神奈川県の「木下鉄男」さんからのメール。ご紹介します。

 初めてにして最後となるお便りをさせて戴きます。
吉村さん、5年におよぶ、喉ごくりの遊覧飛行を有難うございました。
好きな食は650円のナポリタン、この値段でなければもはやナポリタンとは・・・。
 曲は、荒木一郎さんの「君に捧げるほろ苦いブルース」を是非ともお願い致します。
今後ながらく、“愛嬌は地球を救う”の想いで作家として、
いや、表現者として、既成の概念にとらわれることなく遊覧、いえ、雄飛されますことを・・・。

 木下さん。どうもありがとうございます。
 木下鉄男というお名前は、ぼくの小説『ビア・ボーイ』『ウイスキー・ボーイ』
 の主人公の親友の名前ですね。
 本も読んでくださっていたのでしょうか? ありがとうございます。
 では、荒木一郎「君に捧げるほろ苦いブルース」。聴きましょう。

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M3.荒木一郎「君に捧げるほろ苦いブルース」         3:37

 

 
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つづいて、京都市の「クリタスナオ」さんからのメール、ご紹介します。

毎回録音して、仕事から解放された夜のひととき、
グラス片手に夢見心地で楽しんでおりました。
最後に初めてのリクエストさせてください!
吉村さんのお好みではないかも知れませんが…。
 お酒に思いを溶かし込み、別れの時を甘く切なくこらえながら・・・。
そう、私の大好きな石原裕次郎さんで、「ブランデーグラス」です!
 吉村さん、大好きでした!

クリタスナオさん。おおきに、ありがとうございます。
京都って、その甘い熟成感がちょっとブランデーに似ていますよね。
そういえば、八坂神社の南、石塀小路に裕次郎が名づけたバーがありました。
 では、石原裕次郎「ブランデーグラス」。どうぞ。
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M4.石原裕次郎「ブランデーグラス」          3:36

 

 

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 つづいて、東京都「太郎冠者」さんからのメールです。

 「この辺りの者でござる」。吉村さんこんにちは!
多分誰よりも愛している食べ物、それは「もつ焼き」です。
特に「シロ」が好きで、「シロとレバー、タレで2本ずつ!」
というオーダーを今まで1,000回はして来たのではないでしょうか。
シロとレバーはタレですが、あとは塩がいいですね。
 一番好きなお店は、かつて国立にあった「文蔵」です。
吉村さんなら当然ご存知と思いますが、
このお店は山口瞳さんが「居酒屋兆治」という小説のモデルにされ、映画化もされました。
主演は高倉健さんでしたね。
というわけで、リクエストは健さんの「網走番外地」をお願いいたします。
いつも素敵なお話と選曲をありがとうございました。

太郎冠者さん。メール、どうもありがとうございます。
太郎冠者は、狂言の登場人物として、とてもお茶目に、主人を出し抜いて、
どんな状況でも生き抜く役柄ですよね。
ぼくも大好きです。
では、高倉健「網走番外地」。聴きましょう。
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M5.高倉健「網走番外地」                3:41
 

 
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 つづいて、東京都の「指の先まで胃袋」さんからのメール、ご紹介いたします。

 吉村さん、こんにちは。番組が終わってしまうのはとっても寂しいです。
また美味しいお酒のお話聞かせてください。
私がたまに無性に食べたくなるのは、
数年前上海にいた時によく食べていた「ニューロウメン=牛肉麵」。
醤油ベースの牛骨スープに柔らかく煮込んだ牛肉を乗せた定番メニューです。
ゴチャゴチャした小さな路面店で、店に入るなり漂ってくる八角や花椒(ホァジャオ)の
スパイシーな香り。香辛料が効いたピリ辛の味がクセになります。
そしてまたこれに中国の軽いビールがよく合うのです!
中国にいた頃を思い出して、Jay Chouの『稲の香り(稲香)』をお願いします。
 2008年の四川大地震の時につくられた応援ソングですが、
ちょっとつらい時に聞くと、
「不満や泣き言を言ってないで前を向こう」という勇気をもらえると同時に家が恋しくなる曲です。

 「指の先まで胃袋」さん。いいラジオネームですね!
美味しそうで、しかも深い内容のメール、ありがとうございます。
では、ジェイ・チョウ「稲の香り」。聴きましょう。
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M6.ジェイ・チョウ「稲の香り」             3:43
 

 
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続いて京都府の「あばれもんじろう」さんからのメール、読ませていただきます。

 「僕の好きな食べ物 それは砂糖たっぷりの甘過ぎるすき焼きです。
小学生の頃、父が大大奮発して松坂牛を買ってきた事がありました 。
とても高級なものらしく、そうした肉は扱いが難しいからと
父は自ら鍋を用意してすき焼きを作りました。
ところが父は料理なんぞした事はなく、
案の定、肉はひっついてグチャグチャ、味付けは砂糖が多すぎて甘すぎる。
とても美味しいものではありませんでした
いったい100グラムいくらやったんやろ?
父は悔し涙を浮かべながら肉を食べ、母も何も言わずそれを食べ、
僕たち兄弟も甘すぎるその肉をただただ食べていました。
その味は30年たった今も強烈に舌の上に残っています。
けれども何故だかとても楽しい食卓でした。
 その父も他界して、この春で5年が経ちます。
その間に僕には家族ができて昔と同じように、食卓を囲んでいます。
ときどき父を思い出すと、この「甘いすき焼き」が無性に食べたくなります。
いつか奮発して松坂牛を買ってきて、
この「甘いすき焼き」をエピソード付きで家族にごちそうしようと思っています。
 心に残る味というものは案外美味しいものだけじゃないのかもしれないですね。

「あばれもんじろう」さん。心に染みるメールをどうもありがとうございます。
ぼくの父も「すき焼き」だけは自分がリーダーシップをとって、いっつも甘すぎるものを作っていました。なつかしくて、せつないです。

 さて。たびたびお葉書を下さった岩手県の「若年寄えびす」さんの好きな食べものは
『かんぴょう巻き』。子どもの頃からの大好物とのこと。
わさびを少しつけて食べるそうです。
いいですねえ。
寿司屋の良し悪しは、かんぴょう巻きでわかりますよね。
 ぼくの母は寿司屋を手伝っていたので、
遠足のお弁当は、いつも「かんぴょう巻き」でした。

さて。もう1通。東京都豊島区の「すずき・まさはる」さんからは、お葉書でいただきました。

 私のベストの食べものは、なんといっても、「我が家のカレー」です。
母の味を家内が引き継いでくれました。
毎回工夫してくれますが、基本の味は変わりません。
母のときは、友人や親戚が、今は、息子の友人が、カレー目当てに我が家を訪れてくれます。
家内に感謝、感謝!!
 吉村さん。長いこと、お疲れさまでした。新しい旅立ちに乾杯。
槇原ノリユキの「どんなときも」をリクエストいたします。

鈴木雅晴さん。メール、どうもありがとうございます。お母さんのカレー。
そして、それを引き継ぐ奥さまの、愛情がたっぷり注がれたカレー。
ほんとうに「幸せの食べもの」ですね。
 では、槇原ノリユキ「どんなときも」を聴きながら、今日はお別れです。
ご案内は、吉村喜彦でした。
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M7.槇原敬之「どんなときも」                 5:06
 

 
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「まぶしい草野球」
松任谷由実
(3分09秒)
<エキスプレス CA32-1136>

「ククルクク・パロマ」
カエターノ・ヴェローゾ
(3分46秒)
<ポリドール PHCA172>

「君に捧げるほろ苦いブルース」
荒木一郎
(3分32秒)
<EYE NETWORK EWCC-86008>

「ブランデーグラス」
石原裕次郎
(3分34秒)
<テイチク TECA-30419>

「網走番外地」
高倉健
(3分34秒)
<キング KICX-2549>

「稲の香り」
ジェイ・チョウ
(3分43秒)
<SONY SICP2088-9>

「どんなときも。」
槇原敬之
(4分02秒)
<WEA WPC7-8529>

プロデュース:吉村有美子