作家・吉村喜彦のホームページ

「週間読書日記」に、
新刊『酒の神さま』と多摩川の話。
水と川と酒の関連の話を書きました。
日刊ゲンダイ18/11/5
11月X日。新作の小説『酒の神さま~バー・リバーサイド3』(角川春樹事務所・ハルキ文庫 560円)
の出版お祝い会を、二子新地の台湾料理屋の陳さんが開いてくださった。

小説の舞台は二子玉川のバーだが、二子新地は多摩川のちょうど対岸にある
昔は三業地として栄え、二子玉川に飽きた通人がかよったところ。

いまは台湾や韓国、ネパール、タイ、フィリピンなどさまざまな国の人が集う街だ。
橋を渡ると、道幅も狭くなり、人心地がつく。
川べりにいる実感もわく。水の気配があるのだ。

『酒の神さま』には台湾人の美人整体師・周雪麗先生が登場するが、
彼女も台南の川べりに生まれ、台北のリバーサイドに暮らしていたことになっている。
酒と川とは、水でつながっているのだ。

 そんなことを考えているときに出会ったのが、
椎名誠『地球上の全人類と全アリンコの重さは同じらしい』(角川文庫)。

この本を読むと椎名さんの水への強い関心がわかる。

 地球が直径100cmだったらそれを覆う大気は1ミリ。
 一番高い山エベレストは0・7ミリ。
 一番深い海溝は0・9ミリ。

 地球の水はぜんぶで660CC。
 しかもほとんどが海水で、淡水はわずか17CC。
 そのうち12CCは南極や氷河などで凍っていて、
 循環する淡水は5CC。スプーン一杯の量なのだ。

 そんなわずかな水でぼくらは生きているのだとわかり、
 以来、シャワーや手洗い、歯磨きなどの水に気をつかうようになった。

 違う本で、椎名さんは極寒地ではスキーもスケートもできないと書いていた。
 スキーもスケートも人間の重さで氷や雪が溶けてできる水が潤滑剤になっているという。
 極寒地では水がすぐに凍ってしまうのだ。

 そのくだりで、ぼくはマティーニを思いだした。
 「アルコールに水をいかに溶かし込むかが美味しさの秘訣」
 と一流のバーテンダーから聞いたからだ。

 わずかに溶けた氷の水分が、
 マティーニの香りと味をやわらかく開いていくのだそうだ。

 やはり、水はたいせつなんだなあ。

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