過日、武蔵野の雑木林を歩きました。
バス通りから、すこし入るだけで、
空気はひんやりとし、静かな時間が流れています。
この林。
ひと月ほど前には、キンランが花ざかりでした。
いまの季節は、仄暗い木陰に、
ドクダミの白い小さな花がちらほら。
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ドクダミの名の由来は、
古くから毒下しの薬効があるので、「毒を矯める(ためる)」ことから、「毒矯め(どくだめ)」
ドクダメ⇒ドクダミ になったといわれています。
「矯める」とは、正す・直す、という意味。
よく見ると、葉っぱがハートのかたちをしていて、可愛らしいです。
いや、スペードかな?
スペードなら、毒を切り裂く剣なのかも。
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川端茅舎(かわばたぼうしゃ)の句に
どくだみや 真昼の闇に 白十字
があります。
「ドクダミは三毒を消す」ともいわれます。
三毒とは、
「人間が生まれながらに持つ毒」
「病からうける毒」
「食事から入る毒」
この三つの毒から守ってくれる植物がドクダミ。
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生まれながらに持つ毒は、ちょっとやそっとでは、
消し去ることができないし、
作家としてはたいせつな毒なので、
この毒消しはほどほどにして、
ドクダミ茶でも飲むことにしましょう。
武蔵野の林を逍遙しながら、
おもわずフォーレの「シチリアーノ」が浮かびました。