インターFM 「Otona no Radio」
本日のお話は、「ジャマイカ・ビール」。
全文はこんな感じ。
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いまから36年前、1989年の秋。
はじめてジャマイカに行きました。
レゲエ好きの友人との二人旅。
アトランタからジャマイカ島・北西部のモンテゴベイに入り、
そこからレンタカーでキングストンへ往復しました。
モンテゴベイの美しいビーチ。
オチョリオスの滝などをめぐり、
ブルーマウンテンをこえて、
猥雑で危険な都キングストンに入りました。
ボブマーリーやスライ&ロビー、ブラックウフルが録音したスタジオをみて、
「おお!ここであのサウンドが生まれたのか」と感激。
トレンチタウンをこわごわのぞき、トタン屋根のバラックと汚れた街の風景に、
1950年や60年代の生まれ故郷・大阪の下町が重なりました。
モンテゴベイでもキングストンでも、
照明のとぼしい暗い街なか、人びとが集まっているのは、サウンドシステムの周り。
闇のなかでよくわからなかったのですが、近づくとまさに黒山の人だかり。
大きな眼の白さがものすごく目立っていました。
サウンドシステムというのは、
移動式の巨大なスピーカー・セットとアンプがしつらえられ、
DJがレゲエを大音量で聴かせるもの。
お腹の奥底まで、脳天から脊髄までゆるがせる重低音が響いてきます。
その音に身体ごと酔いしれながら、
ほとんどの人がレッドストライプというビールを、小ぶりのボトルからグイ飲みしていました。
これが、めちゃくちゃカッコよかった。
レッドストライプ。いまはイージーに買うことができますが、
1980年代は日本で置いている店は、レゲエをかける店くらいで、
ほんと限られていました。
味は、すっきり。
アルコール度数も低め。軽やかな味わい。
まさに気温の高い土地で生まれたビールという感じで、日本の蒸し暑さにもぴったり。
ゴクゴク飲めるので、ジャマイカでは、のどが渇くと、このビールを何本も飲んでいました。
いろいろ土地のものを食したのですが、
はっきり行って、ジャマイカで美味しいものは、あまり、ありませんでした。
美味しかったのは、ヤム芋の焼き芋とジャーク・チキン。
キングストンから山並みをこえ、
ボブマーリーの生まれた家にあるボブのお墓参りに行ったときのこと。
峠の茶屋で、ボブが好きだったヤム芋の焼き芋屋がありました。
大きなドラム缶の上で網の上でシンプルに焼いただけのヤム。
これがホクホクと香ばしく、レッドストライプをぐい飲みしながら食べた味が忘れられません。
「ボブもきっとこうしてヤム芋を食べて、このビールを飲んだのかも」
その思いが、いっそう味を引き立てたのかもしれません。
ジャミングならぬヤミングの味わいでした。